1.症状

 発病後1年で咽喉や舌に違和感があり、ろれつが回らなくなる構音障害の
軽い症状が現われました。

2年になると発音がうまく言えず、聞き取ってもらおうと必死で話すと汗が出て来る程でした。
3年になると球麻痺が進み、会話が出来ず、聞き取れない単語を発するのがやっとでした 。
4年で気管切開手術を行ない、完全に声を失いました。

   
目の前の 妻を呼べない 悔しさよ
          目が合うまでの チャンスを待つ


2.声を失う前に

 声を失い、筆談も手話も出来ない身体になり、コミュニケーション障害に
陥る事を予測し、誰よりも心配してくれたのは後藤クリニックのG医師でした。
気管切開手術前1年ごろの時期だったと思います。
訪問看護ステーション 「K」 のI作業療法士をとおして、練習用にとパソコン(伝の心?)を
貸して下さいました。

本当に感謝です。
スペックスイッチの操作で文字を一つ一つ拾っていくので、スピードは遅いものの
自分の意志を正確に伝える事が出来る確信を得ました。
また、気管切開手術前8ヶ月ごろの時期に透明文字盤を作り、家族で練習を始めました。

発声練習の 「
あ え い お う あ お」 も構音障害の進行に勝つ事はありませんでした。

今振り返ってみると、準備しておかなければならない事が沢山ありました。
なかでも、自分の声で 「
ありがとう」 を録音しておきたかった!


3.意思伝達装置の申請

 2003年6月16日 T保健福祉事務所のS保健師が我が家を訪れ、
意志伝達装置の申請に関する詳細な説明をして下さいました。
身体障害者手帳に、音声言語障害3級、四肢1級が記載されている事が条件ですとの説明でした。
早速、T厚生病院神経内科のY主治医に身体障害者手帳の更新手続きをお願いしました。

耳鼻咽喉科で音声言語障害3級の検診を、リハビリテーション科で四肢1級の検診を行ないました。

後は、結果を待つのみです。


4.コミュニケーションツール

4−1呼び出しブザー

 気管切開手術をし人工呼吸器を装着して、とても辛い入院中のある日の事でした。
日本ALS協会群馬支部会長のK様から「呼び出しブザー」が届けられました。
声を失い、コミュニケーション障害に陥っていた時だけにとてもありがたい贈り物でした 。

今では、日常生活に欠かすことの出来ない必需品であり、私の声代わりです。
この音で妻 は夜も目を覚まし、私の介護に当たってくれます。

  永い夜 呼び出し鳴らず 朝を待つ

こんな夜もあります。

電極スイッチを額にテープで貼り付け、額に皺を寄せて呼び出しブザーを鳴らす仕組みです。
単三乾電池2本ですので外出するのにも便利です。


4−2呼び出しチャイム

 電器店でワイヤレスチャイムを購入しました。指の筋力があるうちは
リモコンのボタンを押す事が出来ます。
※価格:約3,000円 ※音量調節:無 ※受信範囲:約10m

しかし、次第に筋力が衰え使用出来なくなりました。

そこで!
指の僅かな動きで操作できるジェリービーンスイッチ付きの呼び出しリモコンを購入しました。

川村義肢(株) 呼び出しリモコン(参考価格:7,600円)
シ゛ェリーヒ゛ーンスイッチ(参考価格:6,900円

このスイッチも間もなく使用できなくなりました。
発病後5年半で、指10本が総て動かなくなったためです。

そこで!
ピンタッチスイッチ(参考価格:42,000円)を購入しました。
額にアルミ箔をL字形にしテープで貼ります。ピンタッチスイッチを額に皺を
寄せてアルミ箔に当たるようにテープで止めます。

これで、操作が確実になりました。
今では、呼び出しリモコンは音が大きいので入院時のナースコール用として使用しています。


4−3文字盤

 見易いこと、自分の意思を早く伝えられる事、持ち運びが容易な事などを
考慮して自分なりの文字盤を作りました。

A4サイズに4個の枠(五十音2個、濁音1個、拗音と数字1個)を作り、
パソコンで印刷した紙をOHPフィルムにコピーすると透明文字盤の出来上がりです。
家族や介護に携わる人々とコミュニケーションが取れる様、練習しておきましょう。

<使い方>
まばたき合図を決めておきます 
   1回:はい  2回:いいえ  3回:文字盤で会話
介護者が文字盤を持って患者の視線上に立ちます
文字盤の表面を患者側に向け、距離、位置を患者に確認します
介護者:4個の枠を順次指差して行きます
患 者:該当する枠でまばたき1回します
介護者:該当する枠の「行」を順次指差して行きます
患 者:該当する「行」でまばたき1回します
介護者:該当する行の「段」を順次指差して行きます
患 者:該当する「段」でまばたき1回します(文字決定)
手順4から9を繰り返します
   決定した文字を復唱し、忘れないようにメモをしましょう
   まばたき合図をしっかり確認し、最後まで聞き取りましょう



4−4パソコン(伝の心)

 意思伝達装置の導入に当たっては医療、福祉、介護に携わる多くの人々の
ご支援のお蔭で実現できました。

2003年9月2日 T保健福祉事務所のS保健師の計らいで次の方々が、我が家に集いました。
勿論、身体障害者手帳の更新手続きの結果を確認してからの行動でした。

邑楽町役場福祉課のMさん、訪問看護ステーションKのI作業療法士、
Y作業療法士、 川村義肢(株)のH様

この日は、デモストレーションとパソコンの入力装置の選定を行ないました。

2003年12月17日に上記の方々が集い、パソコンが納品されました。
パソコン本体 と周辺機器を含め約57万円弱でしたが、自己負担は4万円超程度でした。
本当に感謝です。


<入力スイッチ選定のポイント>
ALSの病状の進行は極めて早く、症状に合った入力スイッチに変えて行く事が大切です。

スペックスイッチ 指の力 信頼性中 手からの脱落注意
電極スイッチ 額の皺 信頼性小 テープの粘着力注意
ピンタッチスイッチ 額の皺 信頼性大 テープの粘着力注意


<伝の心の機能>
 介護者にパソコンの電源を入れてもらいます。次に、入力スイッチをセットしてもらいます。
次の画面が表示されます。

日常使用文
  使用頻度の多い文を10個登録出来、音声で出力します。
  また、呼び出し音もあり、とても便利です。

会話
  文字盤から文字を拾ったり、登録文を使い会話文を作り、音声で出力する事も出来ます。
  保存、印刷も出来ます。

文章
  文字盤から文字を拾ったり、登録文を使い文章やメール文を作り、音声で出力する事も出来ます。
  保存、印刷も出来ます。

機器操作
  テレビやビデオなどの電源、音量、チャンネルなどを変える事が出来ます。

設定 
  音、文書表示、操作方法の設定を変える事が出来ます。

呼出し
  プレインストールされておらず、介護者が取扱説明書を読んで設定しなければなりません。
  不便だと思いませんか?

ホームページ インターネットで情報を得る事が出来ます
電子メール 外部の人や携帯電話とメールの交換が出来ます
ウィンドウズ操作 ウィンドウズの操作が出来ます

終了
 パソコンの電源を切ります。


<パソコンは身体の一部>
 声を失う代わりに得る事が出来た 【パソコン】 は、私の身体の一部であり、
日常生活活動に欠かす事の出来ない生活必需品です。
コミュニケーションが取れると穏やかな日々を送る事が出来ます。
自分の意思を正しく伝える事は介護する人も助かると思います。

また、メールの交換やインターネットでの情報検索はとても楽しい物です。
日々進行し続ける神経難病ALS、この体験を今のうちに記録し伝えて行く事が
自分に課せられた責務かなと思う此の頃です。