1.症状
発病後、1年で軽い構音障害の症状が現われました、この時は、飲食には支障は
ありませんでした。
しかし、舌にピクツキが見られ、舌の根元の萎縮が次第に進行し、
唇をなめる事が出来ない程に縮みました。
豆腐などの柔らかい食べ物も舌で押し潰す事が出来ず、舌の上に載った食べ物を
歯まで運ぶことさえ出来ず噛めないほど、舌の筋力が低下していました。
しかし、味覚は正常でし た。
同じ頃、咽喉頭の筋力の低下が進行し、飲食物や唾液を飲み込むのが困難になってきました。
集中して食事をしないと誤嚥を起こします。
誤嚥しそうになった経験は2度ありました。とても息苦しくて死の恐怖を感じました。
このような、球麻痺状態になったのは発病後3年6ヶ月頃だったと思います。
同じ頃、両手両足が不自由になり、首も安定せず、呼吸も浅くなり自力で食事をする事は困難でした。
また、妻の介護の手間が増えてしまいました。
2.食事
妻は次第に変化していく食事の量や質に苦慮していました。
常食の量が減り、柔らかい食べ物、とろみのある食べ物、ミキサ-食、へと変化していきました。
柔らかい食べ物 | お粥、玉子豆腐 |
とろみのある食べ物 | ヨ-グルト、とろろ昆布、モズク |
ミキサ-食 | お粥と鮭、肉じゃが |
魚類 | 骨やトゲは事前に取り除いておく事が大切です |
飲み物 | ジュ-ス(野菜、トマト、バナナ) |
口から食べたり、飲んだり出来なくなると、その対策として胃ろう造設法があります。
食事や介護の手間が大幅に軽減されます。
3.胃ろう造設手術
発病後4年頃の2003年(59歳)9月13日午後、T厚生病院外科の
S医師によって手術が行なわれました。
胃カメラを使用して胃に穴を開け、お腹に胃ろうチュ-ブを取り付けるのです。
1時間足らずの所要時間で胃ろう造設が完成しました。
訪問看護ステ-ション 「K」 のN看護師が胃ろう造設手術のビデオを事前に見せてくれたので
手術に対する不安はありませんでした。
しかし、手術後2週間位までは胃がお腹の皮に釣り下がっている感じがして、とても奇妙でした。
胃ろうチュ-ブは、約6ヶ月ごとに交換(15分程度)します。
汚れ、詰まりや栓の緩み等が出て来るからです。
4.栄養、薬の入れ方
<準備する物>
栄養(ハ-モニック)、栄養袋、薬、注射器、湯呑み茶碗、白湯
<手順> | |
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栄養袋のクレンメ(止め具)を締めます |
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栄養を栄養袋の中に入れ、しっかり蓋をして袋ごとお湯につけ人肌程度に温めます |
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注入する前に痰を吸引し、オムツを見て、身体を真直ぐにして、ベッドを起こします |
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胃ろうチュ-ブがきちんと胃の中に入っているかどうかを確認します |
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胃ろうチュ-ブの先端に注射器を接続し、胃液が引けるか確認します ※正常な胃液は、栄養の色からやや黄色 ※黒色、茶色、緑色の時は、栄養を中止して医師に連絡して下さい |
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栄養袋を高い位置に掛けます。カ-テンレ-ルにS字フックを付け、袋を掛けても良い |
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栄養袋のクレンメを少し開きチュ-ブの先端まで栄養を満たします |
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栄養袋と胃ろうチュ-ブを接続し、栄養を始めます 栄養を落とす速さは、1分間に60-100滴位にします |
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栄養が終わったら湯呑みに薬を入れ、お湯(30-40ml)で溶かします |
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胃ろうチュ-ブと注射器の外筒をつなげ、薬を注入します薬が全部入るのを確認します |
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お湯を栄養袋に入れます |
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お湯が終わったらクレンメを締め、栄養袋と胃ろうチュ-ブを離します |
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15分後、ベッドを元の位置に戻します |
(ご注意)
※栄養袋、注射器は、1週間に1度交換します
※栄養を注入するのが速過ぎたり、多すぎると、下痢、嘔吐、 呼吸困難を
起こす事がありますので、15分毎に確認します
※薬を注入するのと同じ要領でココア、味噌汁、ジュ-ス、グルコサミン などの栄養を
補給すると良いでしょう
※胃ろうチュ-ブの汚れや詰まりを防止するために、酢を満たしておくと効果があります。
5.よだれの処理の仕方(低圧吸引機について)
嚥下障害が進むと飲食物を噛むことも飲み込む事も出来なくなります。
この対策として 、胃ろう造設法があります。
胃の中にチュ-ブを通し、そこから栄養剤を摂るのです。
これで問題が解決した訳ではありません。
口からは、絶えず唾液が分泌していて、その量は一日で1リットル前後に達します。
その働きは、消化作用、消毒作用、潤滑作用です。
その自分の唾液すら飲み込む事が出来ず、匂いのあるよだれとして口から出てきます。
それが首を伝わり、パジャマやシ-ツを濡らしとても不快になります。
また、介護者には見えにくく、介護の手間も多くなります。
この対策として、唾液を低圧吸引機で吸い取る方法があります。
構造は簡単です。低圧吸引機とペットボトル2本と排唾管をビニ-ルホ-スで接続するだけです。
また、低圧吸引機の電源により、固定用と携帯用が有ります。
詳細は次にお問い合わせ下さい。
(株)シスタ-コ-ホ゜レ-ション | 東京都世田谷区太子堂2-12-2 |
使い方も簡単です。
電源を入れ、排唾管を適当な角度に曲げて、口にくわえるだけです。
頭が傾いている方向と同じ口の端に排唾管を挿入します。
この時あまり奥まで差し込むと吸引が低下しますので注意しましょう。
口の中が乾燥する事はありませんが、あくびやクシャミ等で管が外れる事があります。
このような場合には、ビニ-ルホ-スをクリップで止めると効果があります。
お手入れの仕方は、ペットボトルに溜まった唾液をトイレに捨て、水洗いして再使用します。
ペットボトルに泡が残っている場合は廃棄します。
排唾管は毎日、ビニ-ルホ-スは1週間ごとにお湯で洗浄します。
とても便利です。一度お試し下さい。
6.退院の日
2003年10月01日 胃ろう造設手術が終わっての退院の日でした。
T厚生病院の2階会議室で、安全で安心な在宅療養生活を送るための打ち合わせ
会議が開催されました。
医療、福祉、介護に携わる多くの方々のご支援に囲まれている事に本当に励まされます。
出席者は次の通りです。
神経難病医療ネットワ-ク専門相談員(群馬大学) | T看護師 |
館林保健福祉事務所 | S保健師 |
館林厚生病院 | Y主治医、N看護師長、I看護師、IM看護師、他2名 |
訪問看護ステ-ション かがやき | G看護師、N看護師、Sケアマネ-ジャ- |