1.症状

 足の痙攣や突っ張り感があり、バランスよく歩行が出来ない。
よく転倒するので、杖を頼りに歩く生活から、間もなく、
車椅子生活になったのは発病後2年頃でした。

手の異常に気付いたのは発病後1年頃でした。
箸の使い方がぎこちない、ボタンが掛けられない。
それから間もなく、肩、腕、指の筋力が低下し、腕が重くて持ち上がらない。
手で押す、引く、持つ、投げる、握る、摘まむなどの動作が出来なくなり、
日常生活活動 のあらゆる面で介助を必要になったのは発病後2年頃でした。

これで、両手、両足を失った達磨さんになってしまった。
どうしょう? でも、起き上がらなければならない!


2.告知

 身体に異変を感じたのは55歳の秋でした。足や手の運動機能障害が徐々に進行し、
病院に通い始めたのが1年後でした。

3院目で「検査入院」が必要だと言って紹介された病院に入院しました。

入院先 G大学医学部附属病院 神経内科
期 間  2001年4月15日〜4月30日

検査内容の総てを思い出す事は出来ませんが、脊髄から髄液を抜き取られ、
1日中、頭痛や吐き気がして食欲が無かった事を覚えています。

2001年4月27日(56歳)にK医師と家族が揃い、検査結果に基づいて、
告知が行なわれました。
病名は「脊髄性筋萎縮症」でした。この病気は現状より進む事はあっても良くなる事は無い、
3〜5年で寝たきりになる、治療方法が確立されていない病気です。
更に、発症率は、10万人に5人前後、群馬県では約110人の患者がいるとの説明でした。

この時、定年退職を3年余りで迎えられるのに、仕事は続ける事ができるだろうかと言う
疑問はあったものの、進行性神経難病の本当の恐ろしさを知る由もなかった。


3.休職

 36年間お世話になった職場の商品は、成熟期を迎え、減量経営を迫られていました。

55歳の夏、役職離任と同時に、キャリアを生かした職場への初めての
事業部間異動の辞令が降されました。

告知を受けたのは、新しい職場に異動してから1年8ヶ月の時でした。
告知を受けたあとも、妻に通勤の送迎をしてもらい、不自由な手足と戦いながら仕事を続けました。

ところが、その1ヵ月後、無理がたたったのでしょう。
高熱を出し、3週間入院してしまいました。
こんな事あって、病気を受け容れようと思い上司に相談したところ「休職制度(3年)を
利用して健康を取り戻して下さい。」と言うありがたい回答を頂戴する事が出来ました。

休職が始まったのは、定年退職を迎える2年10ヶ月前の事でした。
それ以来、職場に復 帰する事無く定年退職を迎えました。
統合された人事異動と素晴らしい上司との出会いに感謝しています。


4.リハビリテーション

 患者は誰もが病気を治したい。
健康と通常の生活を取り戻したいと願っています。
しかし、進行性神経難病ALSの医療の限界を知り、前向きに生きるには相当のパワーが必要です。
病状の進行は極めて早く、先週出来た簡単な肘の曲げ伸ばしの動作が今週は出来ない
自分に呆れ果て、強制笑いが出るほどでした。

幸いな事に、ALSは肉体的には身体障害者であっても精神的には健常者である事です。

痛みを伴わない身体障害と知的生産活動によって新しい人生が開けると信じています。
電子メールやインターネットでの情報検索、専用車椅子での散歩、福祉車両でのドライブ
など楽しみが増えて来ました。

痛みを伴わない身体障害部分のケア、管理と生活改善提案者としての視点で
見守っていて下さる事に感謝しています。

01.12.06-03.01.31 毎週2回 月、木曜日 I作業療法士
03.02.01-03.03.31 毎週1回 火曜日 I作業療法士I作業療法士
03.04.01-継続中 毎週1回 木曜日 I作業療法士I作業療法士



5.体位交換

 何も出来ない自分にとって、入院(レスパイト)中、とても嬉しい事が沢山ありました 。

吸引、おしっこは大丈夫ですか? 
枕、頭、手、指、足、掛け物、ベッドの位置は大丈夫ですか?
と一つ一つ確認した後で、「ほかに何かありませんか?」と必ず聞いてくれるのです。
私のまばたき合図3回で「文字盤」での会話が交わされるのです。
私の要求が満たされるまで対応して下さいました。
それから、部屋を離れるので満足でした。

<素敵な看護師さん>
看護師さんは患者の病気の良き理解者であり、良き支援者である。
総ては患者の満足を得るために、看護師としての情熱を捧げる人。
処置やケアをした後で、必ず患者に報告や反応を確認する人。


6.各種申請

 病名が特定されたら、各保健福祉事務所や町役場福祉課などにお問い合わせしましょう。

 特定疾患医療受給者証
   保健福祉事務所で発行します。
   医療費、薬代、訪問看護など100%の支援があります。

 身体障害者手帳
   町役場福祉課で発行します。  1級(02.02.08)

 要介護度認定
   町役場福祉課で発行します。 要介護5(02.05.16)

 障害年金
   社会年金事務所で手続きします。


7.介護保険制度利用状況

 失われた身体機能を補うための福祉用具は色々あります。病気の進行に合わせ、
福祉用具を替える事も大切です。

また、生活の質を向上させるサービスもあり、病気に負けない日常生活を確立するために、
ケアマネージャーと相談して決めましょう。

<福祉用具レンタルサービス利用>1割負担
車椅子(自操式、屋外用) 01.07.16-03.09.01
電動ベッド(3モータ式) 01.12.03-03.12.10
車椅子(介助式、屋内用) 02.01.19-03.12.28
エアーマット 02.03.29-02.04.30
車椅子クッション 02.06.11-03.09.01
車椅子(ヘッドレスト付) 03.09.01-04.06.30
電動ベッド(楽匠) 03.12.10-継続中
ベッドサイドテーブル 03.12.28-継続中

<福祉用具購入>1割負担 ※印は全額負担
登山用杖 01.06.08 長女からの誕生日プレゼント(57歳)
シャワーベンチ 01.07.18 入浴用
ノルディックスライド 02.06.18 寝返り用
マルチグローブ 02.06.18 寝返り用
ウレタンマット 02.10.03 肩痛み対応寝具
シャワーキャリー 02.10.10 入浴用
尿器 02.12.05 トイレまで行けない

<住宅改修>-1割負担
 スロープの設置、廊下、トイレへ手摺りの取り付け。
 段差の解消--180000円の支援あり  01.08.29
 (ご注意)
 スロープは木製で屋外設置です。防腐、防蟻処理をしていない木料を使用する大工さん。
 職人のプライドは無いの?

<訪問入浴>1割負担
 2003年-お試し入浴2回(5月、12月)
 2004年-週1回  月曜日(1月〜6月)
       週2回月、金曜日(7月〜現在)

2003年まで、妻は一人で、私の不自由な身体を支え入浴介助をしてくれた事に本当に感謝です。
訪問入浴のお蔭で妻は本当に助かります。

<ヘルパー>1割負担
 コムスン 週1回水曜日 9:30-12:00 (04.10.20-現在)
 私の散歩の日、妻の外出の日です。


8.福祉車両

 寝たきりから、専用車椅子、福祉車両へと移乗して行動範囲を広げる事はとても大切です。
広がる景色から、夢や希望、生きる力を得る事が出来るからです。

2002年6月29日にエステマを購入しました。
助手席が90度回転して外に下りてきます。車椅子からの移乗が容易です。
また、車椅子を吊り上げるリフトも装備しています。
その当時の病状から、この福祉車両が最適と思っていました。
ところが、進行性の神経難病ALSを完全に受け容れる事が出来なかったからでしょうか?
先見の明が無かったのでしょうか?
わずか、1年4ヶ月で、エステマの購入は失敗だった事に気が付きました。
気管切開手術をし、人工呼吸器を装着したからです。
この事が家計に大きな負担を与えたばかりか、足を奪われ生きる希望まで奪ったのです。

寝たきりから、9ヵ月後に人工呼吸器が搭載できる専用車椅子が納品された時の
感動は忘れる事が出来ません。
天井や壁だけを見ている生活から、庭や景色を見る事が出来るのです。
車だったら、もっ と色々な景色が見られる。
どうしても、専用車椅子に乗ったまま移乗出来る福祉車両が欲しくなりました。
エステマを下取りに出し、ついに、2005年4月11日にVOXYを購入しました。

スロープタイプで専用車椅子での移乗がとても容易です。
人工呼吸器用の電源(AC 100V 3A 平行コンセント)も装備しています。
専用車椅子の他、3名が乗車出来ます。
リフトタイプは専用車椅子が大きいので、必ず、確認しましょう。

毎週水曜日は散歩の日にしています。
看護師とヘルパーさんのご支援があるからです。
今は寝たきりじゃない、希望する何処へでも行ける。
そんな安心感が生きる支えになっています。


9.外出時の準備物

 楽しみの外出の裏には準備の大変さがあります。
外出する度ごとに改善し、安全で安心な外出を楽しみましょう。

福祉車両(AC100V.3A)、専用車椅子、呼び出しブザー、人工呼吸器、外部バッテリー、
吸引器、カテーテル(2本)、
ペットボトル(2本オスバン液)、ピンセット(2本)、カット綿、
低圧吸引器一式(よだれ処理用)、単1乾電池(2本)アンビュー、尿器、文字盤、
タオル、ティッシュペーパー、ゴミ袋など

その他、天候に応じて帽子やバスタオルなどを用意しましょう。
外泊の準備はした事がないので、今後の課題です。