難病相談支援
連携お役立ちガイド

17.ハローワーク

ハローワークの専門援助部門(障害者専門相談窓口)

①求人情報の提供

障害者求人に限らず一般求人でも、デスクワークや短時間勤務等について本人の条件に合う求人情報を検索機で探すことができ、タイムリーな情報提供をしています。

②職業相談

本人の興味や強みを活かした職業開発につながるキャリア支援や仕事内容や利用できる制度等の情報提供を含めた職業相談を行っています。

③個別の職場開拓

本人に合う仕事の求人がない場合でも、職場を訪問し、職務の切り出し等による求人開拓や事業者との交渉等を行い、個別の職場開拓をします。

④職場実習、職場体験

職場実習や職場体験が実施できる職場を開拓します。

⑤履歴書作成や就職面接の練習

就職活動で必要な「病気や必要な配慮についての説明」「自己アピール」「経歴の空白になっている期間をどう説明するか」等について、実際の場面を想定して本人が練習し、それに対して助言します。必要であれば、支援者が就職面接に同席することもできます。

事例1 雇用開拓担当者の新規の求人開拓

ハローワークの雇用開拓担当者が、これまで障害者雇用の実績がある事業所を訪問し、人事担当者(取締役)に、難病のある人を採用した場合に利用できる「難治性疾患患者雇用開発助成金制度」について説明し、求人を出すよう促したところ、新たに求人票が出されました。

早速、応募を希望していた求職者に求人の内容を説明し、職場見学に同行しました。そして、面接で仕事内容の具体的な説明を受け、求職者は無理なく働けることを確認し、就職することができました。


【コラム】履歴書作成や就職面接の練習

(1)履歴書の様式
A4サイズのJIS規格(日本工業規格)の履歴書が多く使われていますが、自己アピールをしやすいよう工夫された様式のものなども市販されています。その種類も新規卒業生用、転職者用などいろいろあるため、自分に合った書きやすいものを選びましょう。

(2)履歴書は手書きかパソコンか
履歴書をパソコンで作成するか、手書きで作成するかは、応募事業所により異なります。ホームページからエントリーできる事業所やIT関連、あるいは、外資系事業所に応募するなどの場合はパソコンでの作成がよいと考えられます。「手書きでもパソコンでも構わない」とする事業所は増えていますが、手書き文字に好感をもつ事業所が多いのも事実です。迷った場合はハローワークなどに相談しましょう。

(3)履歴書への病気等の記載
就職活動の際に、どのように事業者に病気のことを伝えたらよいでしょうか。その1つの手段として、履歴書に病名を記載し、事業者に病気があることや健康管理が必要になることなどを伝える履歴書開示という手段があります。

記載例:『(  病 名  )により(   )ヶ月に(   )回、通院しておりますが、医師より就労可能と言われております』等

「JIS規格履歴書」の場合、記載場所は、『本人希望記載欄』が適していると考えます。特に就業上の制限がない場合は、「一般就労可能で、特に制限もなく・・・」と記載し、制限や特定の配慮を先に明示しておきたい場合には、配慮希望事項について具体的かつ端的に記載します。

ここで言う就労可能とは、一般の社会通念においても、応募しようとしている事業所の仕事が可能であることを意味します(一定の配慮を受けながら労務提供ができる状態)。具体的には、週に2〜3日(20時間前後)、週3〜4日(30時間前後)や、フルタイム(40時間)プラス残業時間程度です。

就職前に、これまでの病気や治療の経過、医師の意見などを参考にしながら、今の体調や状態で、就労で生じる心身の負担にどの程度耐えられるのか、悪化した場合はどうするか、などを検討することが必要です。さらに、応募しようとしている仕事と、医師の就労に関する見解との整合性をはかれるように、事前に医師と職種や就労時間、就労の際に気をつけるべき点などについて相談しておくことが大切です。

(4)病気により一定期間働いていない期間がある場合
転職にかかる期間は平均で2〜3ヶ月程と言われています。半年、1年、2年、それ以上に離職期間が長くなった場合、事業者としては働いていなかった理由が気になるものです。「採用した後に、すぐに仕事ができるのだろうか」「長く働くことが可能だろうか」「安全に通勤できるだろうか」といった懸念を持ちます。直近での就労実績がない場合や前職を退職してから間があいている場合、採用担当者は働けるイメージを持ちにくく、採用を控えることもあります。病気による療養が理由の場合でも、現在は就労可能な状態にあることを理解してもらうため、医師に就業に関する意見書などを書いてもらうことも一つの工夫です。また、ハローワークの委託訓練校や、福祉的就労の就労継続支援A型、就労移行支援事業所、軽度のアルバイト、民間のスクールなどを活用し、働いた実績をつけることも有効な方法です。

(5)採用面接での留意点:説明しすぎない
病気の有無にかかわらず、採用面接では説明しすぎないことが大切です。無理をしたくない一心で、採用面接で病気について丁寧に時間をかけて伝えることは、かえって採用担当者の不安を強めることにつながります。病気以外についても、伝えたいことを端的に要領よく伝えることが大切です。

(6)採用面接時の病気に関する質問
採用面接時に病気があることを開示した場合、採用担当者からの質問の多くが、「どのような病気か」「体調は悪化しないか」です。あなたの体調を気遣うだけでなく、病気を持ちながら仕事ができるかという不安と、悪化した場合の安全対策などについて関心があります。この時点では、採用担当者へ病気の説明を詳細にすることは避け、どんな仕事や作業に、どんな配慮が必要で、その配慮があれば働けることをアピールしましょう。

(7)プラスを意識してプラスで終わる
採用面接では、病気にかかわらず働くための準備ができていることを伝えることが大切です。

病気体験などを伝える必要もありますが、面接の最後には、「その経験を通して、何を学び、どのように仕事に活かそうと考えているか」を伝え、採用担当者にポジティブな印象を与えることができるようにしましょう。

(8)病気に関する情報の伝え方
①悪い例
【本人】
「私は潰瘍性大腸炎です。これは難病に指定されている腸疾患です。」「定期的に通院する必要があります。腹痛があり、トイレに頻繁に行かなくてはいけません。入院の可能性もあります。」
【支援者】
「障害者雇用率にはカウントされませんが、難病患者の就労困難性の大きさをご理解頂き、雇用をお願いします。」「難病者を雇用した事業者には最大135万円の助成金が出るようになり、事業者にも雇用するメリットがあります。」

*これは、悪い例です。事業者・職場の人は「難病」への先入観を強く持ち、「難病の人とは働けない」「雇用には問題が大きい」「135万円では、難病の人を雇用することに伴う負担に見合わない」「雇用には何のメリットもない」と考える可能性があります。

②良い例
【本人】
「デザインが得意です。作品を持参しました。また、前職ではホームページ制作も経験しました。御社のニーズに応えられます。」「持病の潰瘍性大腸炎については、デスクワークでの仕事では、疾患管理上も特に問題はないと、医師の意見書もあります。定期通院は有給休暇で対応できます。」「ただし急にトイレに行きたくなることもありますので、その点は配慮をお願いします。」
【支援者】
「まずは、○○さんの仕事能力について障害者トライアル雇用制度で確認して頂ければと思います。障害者トライアル雇用は、障害者を原則3か月間試行雇用することで、適性や能力を見極め、継続雇用のきっかけとすることを目的とした制度です。仕事ぶりや健康管理上必要な職場の配慮等を確認した上で継続雇用へ移行でき、障害者雇用への不安を解消できます。この制度の利用にあたっては助成金を受けることができます。さらに、難治性疾患の方の雇用に取り組まれる事業所には助成金が支給される制度(特定求職者雇用開発助成金)もありますので、ご関心がありましたら詳しくご説明させて頂きます。」

*これは、良い例です。事業者や採用担当者にとって、この人を雇うことで事業に貢献してもらえるイメージが持てます。また、「難病=働けない」「難病=配慮が大変」という誤解が払拭され、安心して雇用することができます。

通院等の配慮についても、事業者は「能力を発揮してもらうためには当たり前、お互い様」と考えやすい説明です。

「障害者手帳のない難病患者の雇用にはメリットはありませんか?」

事業者が障害者を雇う義務は、法律に明記されており、法定雇用率未達成の場合には国からの指導を受けることになります。障害者の求人や障害者合同面接会で、「障害者手帳のある人の雇用」を急いでいる事業所から、障害者手帳を持たない難病患者が「門前払い」のような扱いを受けた場合には、「障害者雇用率を遵守したい」と事業所側が考えている可能性があります。以上から、すべての事業所が、「障害者手帳のない人には雇用のメリットがない」と考えていると誤解しないようにしましょう。

【コラム】難病のある人を対象とした助成金等

これらの助成金等は、難病のある人を雇用する事業主が申請し、受給要件を満たした場合、事業主に対して支給されます。(※事業主の方が受給要件を満たさない場合、受給できません)
詳細は、都道府県労働局にお問い合わせください。

(1)新しく難病のある人を雇い入れる場合
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
難病の方等をハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行っています。

障害者トライアル雇用事業
ハローワーク等の紹介により、障害者を一定期間(原則3か月)雇用する事業主に対して助成を行っています。試行雇用により、適性や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深めることで、継続雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的としています。

(2)難病の方の雇用管理の見直しや柔軟な働き方の工夫等を行う場合
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)
雇用する障害者に対して、特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等を講じる事業主に対して助成を行っています。職場定着支援計画を作成・認定の上、対象労働者に対して以下の措置を実施した場合に助成金を支給します。

  1. 柔軟な時間管理・休暇取得
  2. 短時間労働者の勤務時間延長
  3. 正規・無期転換
  4. 職場支援員の配置
  5. 職場復帰支援
  6. 社内理解の促進(1〜5の措置と組み合わせた場合のみ助成)

事業主の皆様へ

発達障害者や難治性疾患患者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
事業主に雇い入れた方に対する配慮事項等についてご報告いただきます。
また、雇入れから約6か月後にハローワーク職員等が職場訪問を行います。

詳細ページへ(厚生労働省HP)