難病相談支援
連携お役立ちガイド

20.ジョブコーチ支援

ジョブコーチ支援とは

ジョブコーチ(職場適応援助者)は、職場に出向いて、障害特性を踏まえた直接的で専門的な支援を行い、障害者(難病を含む)の職場適応、定着を図ります。ジョブコーチ支援は、一般的・抽象的なものではなく、障害者が仕事を遂行し、職場に適応するため、具体的な目標を定め、支援計画に基づいて実施されます。支援対象は、障害者本人だけでなく、事業所や障害者の家族も含まれます。ジョブコーチが行う障害者に対する支援を事業所の上司や同僚が参考にし、職場に浸透させることを目指しています。

ジョブコーチ支援を受けるには、障害(難病を含む)のある人と事業者双方の同意が必要です。支援を依頼する際には、あらかじめ事業所の担当者との相談が必要です。ジョブコーチ支援は、それぞれの状況やニーズに合わせて行われます。支援日数(期間)等の詳細は、それぞれのジョブコーチで条件が異なり、事前に確認が必要です。

事業所在籍型ジョブコーチがいない場合は、各都道府県に設置されている障害者職業センター等の配置型ジョブコーチや訪問型ジョブコーチの活用を検討します。

※都道府県の障害者職業センターの問い合わせ先

参考資料)東京都が独自に行っている「東京ジョブコーチ」支援制度

1)支援対象者:東京都在住、在勤の障害をお持ちの方

2)支援内容
 ①本人向け
 ・職場のコミュニケーションをスムーズに行うための支援
 ・仕事を理解し、適切に行うための支援
 ・職場のルールやマナーを理解するための支援 等

 ②事業所向け
 ・障害(難病を含む)のある人が、一人で仕事ができるような指導や職場環境についての助言
 ・一緒の働く従業員の障害者雇用に対する意識の向上のための支援 等

3)支援の頻度:20回(20日)まで

4)利用料:無料

事例7 難病発症後の復帰時にジョブコーチを活用

A氏は、一般事務(主な仕事内容:データ入力・申請書類の作成と確認・電話応対等)で就労中に難治性疾患(重症筋無力症)を発症し、体調不良のため半年間の休職後、元の職場に復職することになりました。A氏は、以前のように仕事ができるのかどうか、また、職場でも難病のある人の雇用経験がなく、雇用の継続に不安があったため、ジョブコーチ支援を利用することになりました。

支援計画の作成にあたり、ジョブコーチとA氏、事業所の担当者と相談の結果、治療のために定期的に平日の休暇取得が必要であり、担当医よりフルタイムでの就労は体力的に難しいとの意見があり、勤務時間を短縮することになりました。仕事内容は疾患による影響が少ないと判断されたため、仕事量や作業時間などA氏が対応可能な状況を確認し、調整することをジョブコーチに依頼しました。

復職後はA氏には、発病前と同じ作業内容に取り組んでもらい、ジョブコーチが見守り、状況の把握を行いました。その結果、仕事内容には対応可能である反面、データ入力など長時間同じ作業を続けると疲労で作業効率が低下することや、立ち作業では15分程度で疲れが増すことがわかりました。
また、A氏が毎日の体調をチェックして記録した結果、疲労が蓄積していることが分かり、ジョブコーチが面談し、状況を聞き取りました。

A氏は「無理をしないでよい」と事業所の担当者から言われてはいましたが、「仕事ができないと退職させられるのではないか」という心配や、「自分が出来ない仕事を同僚に代わってもらって迷惑をかけたくない」と、発病前と変わらないペースで作業をしようと無理をしていました。疲れても「休ませてほしい」と言い出しにくいと感じていました。
他方で、事業所の担当者は、A氏が復職後、一見すると発病前の状況と変わりがなく、特に問題がないと考えていたので、ジョブコーチが配慮事項を説明して理解を促し、具体的な対応策についてアドバイスをしました。
さらに、A氏にも、日々の健康管理はもちろん、満員電車での通勤が疲労を増長する原因の一つであることが分かったので、通勤方法の変更を提案しました。

また、ジョブコーチは、突然の体調不良時に迷惑をかけないために、体調に変化の予兆がある時は上司に相談することや、仕事の進捗状況を上司に報告しておくことなど、A氏が不在でも仕事に影響しない方法を、A氏と上司で考えるようアドバイスしました。

こうして復職時の課題へ対応できる状態になったので、支援を終了しました。しかし、今後就労を継続する中で、体調の変化や治療の方針が変わり、新たな課題が発生する可能性もあります。そこで、障害者職業・生活支援センターなどの相談窓口等の紹介等、ジョブコーチの支援終了後の課題発生時にも対応できる支援先も紹介しました。