障害者トライアル雇用(制度)とは
ハローワークや民間職業紹介事業所には「障害者トライアル雇用」の制度を利用した求人があります。これは事業所と病気やけが等で仕事への影響がある人が相互の理解を深め、その後の常用的雇用へ移行するきっかけを、試験雇用(最長3か月)でつくる事業です。求職者は賃金を得ながら会社や職場の雰囲気などに加え、仕事内容が自分に合っているか、無理がないかを確認するとともに、職場での課題も明確になり、対処方法を考えることもできます。一方、事業者や職場も求職者の実際の仕事ぶりや勤務状況、職場の受け入れなどを確認できます。
難病のある人を初めて雇用する事業所にとっては、病気や治療についての知識や業務量の調整等わからないことも多く、不安を抱える場合が少なくありません。トライアル雇用制度は、求職者と雇い入れ側が1〜3ヶ月かけて相互確認できることが最大のメリットです。対象者は期間中に業務内容、職場環境を体感しながら、自分が「やれるか」「やっていきたいと思えるか」の意思を再確認でき、雇い入れ側も適性を見極める期間が持てるため、障害者雇用にとても重要です。
その人の特性や気持ち(特に就労意欲)、職業準備性、人間性は面接では見極められず、働きはじめて現れ、変化するものです。雇い入れ側も本人に対する手立てを見出し、意識の立て直しや業務面での調整(作業内容・作業量等)を提案することができます。そのような措置を講じても、作業能力や勤務状況に影響する場合には、本人の意思を確認しながら課題を提示して取り組んでもらいます。
トライアル雇用は、事業者によっては9割以上が継続雇用につながります。この制度は、求められる適性が特に高い職種、作業スキルの他にコミュニケーション能力などが必要な職場の場合や、本人の特性上、勤怠が安定せずになかなか定着できない場合に、事前に職業適性が判断できるので、本人、雇用側の両者にとって有効です。
事例2 トライアル雇用を活用して、初めて一般就労を目指した20歳代クローン病男性
男性(クローン病、20歳代後半)は、これまでに症状が落ち着いている期間(3か月間)のアルバイト経験は数回あるものの、正規雇用の就労経験はありませんでした。しかし、「一般就労を目指したい」と希望し、事務職のトライアル雇用を利用しました。
トライアル雇用中、事業者は、トイレ回数は多いものの、きっちり仕事をこなし、職場にも馴染み始めているため、一般雇用への移行を提案しました。しかし、本人は一般雇用への移行を断りました。男性は、かつて大学在学中に建築・設計業を目指していましたが、体力的に難しいと諦めていました。体力的には事務職が適していましたが、トライアル雇用で実際に就労してみると、業務はこなせるものの、自分のやりたいことではないと気付いたようでした。
このようにトライアル雇用では、実際にやってみて気づくことも多くあります。そして、必要に応じて難病患者就職サポーターなどの専門的な支援を受けることもできます。通常の業務の流れから、障害者ができる部分を抜き取り、職場にとっても効率的で、無理なくできる仕事に配置するなどの支援も受けることができます。他にも各自治体の障害者就労支援者や支援機関によるきめ細かなサポートを受けることができます。
難病のある人にとっては、通院や服薬への配慮は必要ですが、配慮をしてもらうだけでなく、体調や病状の変化を正しく会社に伝え、無理なく仕事を続けるための工夫や配慮についてトライアル雇用中に相談できることは貴重な機会です。
事業主の皆様へ
ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、就職が困難な障害者を一定期間雇用することにより、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、障害者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。