難病相談支援センターは、難病のある方の生活上の相談支援、地域交流活動の促進、就労支援、講演会・研修会の開催等、地域の実情に応じた事業を行う拠点として各都道府県に設置されています。難病療養生活上の悩みや不安を軽減することを目的に難病療養者やその家族からの相談を受けています(無料、一部事業を除く)。
難病相談支援センターの運営主体は、県庁や県立病院の行政直営、当事者活動組織(当事者主体で運営しているNPOを含む)、拠点病院、NPO(医療・福祉・当事者等関係者で運営)、医師会、社会福祉協議会と様々です。相談支援員として、保健師、看護師、メディカルソーシャルワーカー、医師等の専門職が配置されており、全体の約2割の難病相談支援センターでは、当事者としての経験を活かして相談を受けるピア・サポーターも配置されています。
難病相談支援センターでは、地域の支援機関と連携しながら就労に関する相談支援を行っており、就労に関する相談支援を行う就労支援員を配置している場合や、ハローワークに配置されている難病患者就職サポーターが出向いて出張相談を受けている場合があります。
事例8 特技を仕事に結びつけることができた
複数回の手術による長期間の休職を強いられた男性(劇症型クローン病、40歳代)は、体調悪化に勤務先の経営状態の悪化が重なり、リストラの対象となり退職しました。難病相談支援センターの就労支援員(このセンターの場合はピア・サポーター)の勧めで得意の絵を二科展に出品したところ、見事入賞し、諦めていたデザイナーの仕事に就くことを考えるようになりました。就労支援員がハローワークと連携し、デザイナーを募集している事業所を紹介して、男性は就職することができました。
健康管理が必要なため、最初は非正規社員として採用され、その後、会社から正規社員を勧められましたが、「将来はデザイナーとして独立をしたい」という本人の意向があり、非正規社員のまま働き続けています。
担当した就労支援員より一言
この男性は、当初は病気によりできなくなったことばかりにとらわれていましたが、二科展入賞で、自分の強みに気づき、それを仕事に結びつけることができました。
過酷な手術を何度も受け、体力も職業も奪われた患者が、自分の境遇を嘆くだけではなく、「せっかくの人生だからやりたいことをやる!」と決意することができました。この支援は、結果として、人生観や仕事観の転換につながる支援となりました。
事例9 病状の進行に合わせて職業を変え、生活支援を受けながらも独り暮らしを実現
手先が器用で、小物作りが好きな女性(脊髄小脳変性症、30歳代)は、難病相談支援センターとハローワーク担当者との会議で、病院の給食室への就職が決まりました。「自分が作る料理を『おいしい』と言って食べてくれることに、やりがいを感じていた」と言います。
しかし、病気の進行により重い物が持てなくなり、職場でバナナを運んでいる時に転倒したため、再び難病相談支援センターの相談支援員に相談し、紹介された職業訓練(PCを使った編集作業)に通い、編集作業の能力を身に付けました。
そして、体力に無理のない範囲の時間(1日4時間程度)で、編集作業の仕事に就きました。職場までは自分が運転する車で通い、職場では車椅子で過ごすように工夫しました。帰宅後の訪問介護で食事と入浴介助を利用するなど、必要な支援を受けながら就労することができました。
事例10 支援機関との連携により、障害年金を受給しながら福祉的就労で経済的に自立した生活が実現
【コラム】障害年金は障害者手帳がなくても受給できます
(1)障害年金とは
病気やけがのために働けなくなった、または働くことが制限されている現役世代の人も含めて受け取ることができる年金です。難病により働けなくなった場合だけでなく、治療や体調管理により1日3時間や1週間で2〜3日間等、労働時間を短縮して経済的に困っている場合には、障害年金と給与所得を組み合わせて生計を立てることができます。
(2)障害年金の種類
障害年金は、障害基礎年金、障害厚生年金があります。病気やケガで初めて医師の診療を受けた時(初診日)に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金の対象に、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象になります。その他、共済組合等があり、勤務先により異なります。
なお、20歳前(年金制度に加入していない期間)、または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因である病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)の病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。
(3)障害年金の申請
障害年金の申請には、指定された申請書類の提出が求められます。書類を揃えるだけでも大変だと感じるかもしれません。受給の審査は、医師の診断書(指定の様式あり)や病歴・就労状況等申立書により判断されるため、より詳しく状況が伝わるように記載することが重要です。提出先は年金事務所になります。
(4)申請時の留意点
障害年金は、申請条件を満たした上で、支給条件に見合う状況かどうかの審査があります。難病の場合、多くは病状に変化があるので、働けない、または、障害年金を受給する状況であることを証明するのは簡単ではありません。そのため、審査を担当する医師に対して、状況を正確に伝えられるように、診断書や申請書を作成することが大切です。
(5)障害年金に関する相談
障害年金の申請を希望する時は、まずは通院先の医療ソーシャルワーカー(病院の医療相談室など)に相談しましょう。難病相談支援センターや障害者就業・生活支援センターの支援員も相談を受けています。より専門的な個別の対応を希望する場合は、障害年金に詳しい社会保険労務士(事務所)に申請代行を依頼する方法もあります(有料)。